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至仏山から紅葉の尾瀬を一望する

今年は山に行こうとすると空がぐずつくというサイクルで、少々フラストレーションがたまる日が続いていた。とはいえ、ブログにまとめていない山行が7回あったり、地質がらみの博物館へ行ったりとそれなりに楽しいこともあったので、あくまで少々のフラストレーションだ。
そんな折、思うところがありメインのカメラをEOS R5からGFX100RFへ入れ換えたので、新しいカメラの習熟も兼ねて、尾瀬に行ったことがないという @alcinist 氏を誘い紅葉の至仏山へ向かった。
尾瀬を一望できる周回コース
紅葉期の至仏山、「これぞ尾瀬」の代名詞のような風景をみるためには山の鼻─山頂間の道がベストポイントになる。しかし、この道は一方通行のため(植生保護や濡れた蛇紋岩で滑りやすいため)鳩待峠からはアクセスできたない。そのため、山の鼻に下りてから山頂を目指し鳩待峠へ下る周回コース以外の選択肢はない。同行の @alcinist 氏は初めての尾瀬だ。せっかくなので鳩待峠─山頂のピストンコースよりも、より多くの風景が見られるコースで尾瀬を満喫してもらいたいという思いもあった。
鳩待峠─山の鼻
戸倉駐車場から乗合いタクシーに揺られ約30分。尾瀬の玄関口(のひとつ)鳩待峠へ到着。10月も後半、そろそろ尾瀬もシーズンアウトのタイミングということもあり、冬を感じる風の冷たさだ。

バス乗降場から鳩待峠の広場へ向かうと、鳩待山荘が生まれ変わった「はとまちベース」が見えてきた。この日はオープン前に入山しクローズ後に下山してくるという一日だったので、結局中を見ることはできなかったが、窓から見える様子では外観のイメージに沿ったいまどきのリゾート拠点という雰囲気だった。
鳩待峠から山の鼻までの道はこのブログでも何度か紹介しているので簡潔に……と言いたいところだが、新しいカメラと紅葉の尾瀬となれば気分はどうしても浮かれてしまう。

木道から川上川を挟んだ対岸の森に朝日が射し込む。それまで青く暗かった木道が一転、手前の茂みの向こうに鮮やかな秋が広がった。一般的な登山道以上に行動範囲の狭い木道に、固定式単焦点レンズのカメラは最も相性が悪い組み合わせに思えるが、クロップズームである程度はカバーできる。
1億画素(100MP)という解像度は圧縮RAWで1枚あたり約120MBというヘビーなデータでストレージを圧迫してくるが、4段階の画角と9種のフレームの切りかえは、写真撮影に意外なほど自由さと軽快さを与えてくれる。

なにより高輝度の彩度がしっかりと出るおかげで、これまでとても気をつかっていた空や光り輝く葉のトーンも、思うようにコントロールできることがありがたい。

瑞々しくも色鮮やかな尾瀬の森を撮り歩いているうちに、気がつけば山の鼻へ到着していた。
直近の情報でも得られるかと入ったビジターセンターでは、スタッフの方の「今日は至仏山の日だよ」という声に期待はさらに高まる。飲料水の補給とトイレを済ませて、いざ至仏山へ。
至仏山へ

登山口の手前に広がる観察見本園の見事な草紅葉。このまま尾瀬ヶ原を散策したくなる気を抑えてゲートの先の森へ足を進める。ちなみに至仏山は尾瀬エリアで最も古く、山が形成されたのは約1億年と言われているとおり、丸みを帯びたなだらかな山容だ(遠くから見る分には)。


ゲートをくぐり樹林帯へ入ると、穏やかに見える山容とは真逆の急登が待っている。おまけにどこからこんなに湧いてくるのか?と思うほどあちこちから水が湧き、ただでさえ滑りやすい蛇紋岩と階段を川になるほどの水量で流れ落ちてくる。
いくら防水の登山靴と言えど、この量の水の中にジャブジャブ突っ込んでいれば沁みてくるのは必定。一歩一歩、水位が低くグラつかない足場を探しながらの急登だ。そして、ここでの消耗に悩まされることになる。

ほどなく標高約1,500mの森林限界を超え、このコースの醍醐味でもあるパノラマゾーンに入った。
ここから山頂までは振り返れば常に、正面に燧ヶ岳を据えた尾瀬一望の絶景が広がるのだ。さらにこの日は雲ひとつない快晴で、尾瀬の全てが鮮やかに色付いていた。

ちなみにこの写真で見える尾瀬の山々は、産総研の公開している地質図を見ると、それぞれがまったく別の岩石がばらばらの時代にできていることが分かる。この図を見た上で実際の風景を見ると、その特徴がそれぞれの山容に現れてることも感じられ、登山の楽しみがさらに深まるので、山に登る前にぜひ地形図と合わせて地質図も見てもらいたい。
……と、ここまでは順調だったのだが、高天原という展望ポイントの直前でアクシデントに見舞われた。
序盤の消耗と睡眠不足がたたって、右のふくらはぎと両ももが一気に攣ってしまったのだ。踏ん張ればふくらはぎが攣り、鎖場で身体を持ち上げようとすると内転筋が攣ってしまい進まない。幸い高天原のベンチがすぐ近くだったので、そこで昼食をとりながら回復を待つことにした。

カップ麺を啜りながら足を休めていると、下から聞き覚えのある声が聞こえてくる。もしかして?と思っていたら、やはり写真家の川野恭子氏だった。「こんな天気なら川野さんもいそうだね」なんて話をしていたタイミングでのご本人登場で笑ってしまい、そのまま山頂までご一緒することに。

山頂でしばらく雑談した後、山の鼻でテント泊するという彼女らと分かれて、我々は下山を開始した。
鳩待峠の最終バスへ


至仏山からの下山路は、左手側に尾瀬の風景、右手側に谷川連峰方面の荒々しい風景というキャラクターの違う風景を楽しめる岩稜歩きなのだが、足の攣りでかなりの時間をロスしてしまったのでじっくり楽しんでいる余裕はない。山頂出発時点で13:45、鳩待峠までは一般的なコースタイムで約2.5時間。最終バスが16:30なので足に問題がなくてもギリギリなのだ。
芍薬甘草湯のおかげで多少脚のダメージは回復してはいるものの、油断をすれば再発しそうな焦りを抱えつつも、できる限りのペースで歩き、なんとか16:00ジャストに鳩待峠に着くことができた。はとまちベースの閉店時間にあと一歩で間に合わず、どんな施設なのかは来年までお預けになってしまったが、最終バスにはなんとか間に合うことができた。
最高の紅葉に思わぬアクシデント。さらに予想外の出会いがあり、岩の表情を見ることで広がる山の楽しみが得られたとても充実した一日になった。特に事前に地質図も読みこむことで、山のキャラクターへの理解が深まるということを実感できたのは大きな収穫だった。
新しい相棒であるGFX100RFにも良い感触を得られ、来年の個展に向けてモチベーションが上がるのを感じているが、このカメラについて語るのはまた別の機会にしようと思う。

