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AIで深まる山歩きの奥行き─硫黄岳の出汁を味わう
AIを使って旅のしおりを作るとワクワク感が倍増する
最近、登山や撮影に行く前にGPTやGeminiのようなAIで、気になっているポイントの生態系や地質のレポートを作っている。ハルシネーションのおそれはもちろんあるけれど、ソースの提示を条件にすると必要十分な情報が素早く集められるのは素晴らしい。

今回は地図を見ながら、南北八ヶ岳の真ん中にある硫黄岳が気になったので、9月初旬の硫黄岳で見られる地質や動植物のレポートをGeminiにまとめてもらった。この時に歩く具体的なルートをプロンプトに含めると情報の精度が上がる。
こうしてできあがったレポートを、修学旅行や遠足のときに配られた「旅のしおり」風にアレンジすると、同行者の気分もアガるので家族や友人との登山にオススメしたい。この時に手書き風の書体にしたり、随所にペン画風の挿絵を入れると最高だ。
できあがったしおりは色の付いた紙にプリントするのが(遊びの気分としては)ベストではあるものの、荷物が増えるのは……という向きにはPDF化してスマホに入れておいたり、クラウドドライブのオフラインドキュメントとして保存しておくと良いだろう。
今回は、桜平(スタート)─夏沢鉱泉─オーレン小屋─夏沢峠─硫黄岳山頂─赤岩ノ頭─オーレン小屋─夏沢鉱泉─桜平(ゴール)というコースを予定した。準備万端、いざ八ヶ岳へ向け夜が明けきらぬ高速道路へ走りだす。
人気エリアの洗礼
午前7時の少し前、登山口のある桜平へ到着したものの人気エリアの洗礼を受けてしまった。
夏と秋の間という半端な時期とはいえ、そこは八ヶ岳。桜平の上・中・下のうち、中までが満車のようだ。3km以上離れた下の駐車場に一台も駐まっていなかったので油断していた……幸い、中の駐車場から少し戻ったところにあったスペースになんとか滑り込むことができた。
振り返れば笑い話なのだが、歩き始めると(7時過ぎ)上の駐車場から下りてくる車や、上の駐車場へ下山してくる人もいたので、上まで行ってしまえば数台は駐めるスペースはあったようだ。
沢音を聴き、野鳥を探す



八ヶ岳の樹林帯と言えば、しっとりとした空気と青々とした苔の森だ。久しぶりに20℃台の心地よい風と沢音に気持ちよく歩を進めていると、ちらほらと赤く色付いて秋の気配を漂わせている枝が目に留まる。
そういえば夏の南八ヶ岳に来たのはいつぶりだろう?と思い出してみると、なんと21年前だった。当時は写真作品を作ろうなんてことも考えてもいなかったし、若さと勢いにまかせたグループ登山だったので稜線以外の樹林帯のことはあまり覚えていないおかげで、序盤の森歩きはとても新鮮な気持ちだ。今回の登山では野鳥の観察・撮影が半分、稜線からの地質観察が半分なので、いきなりメインディッシュのようなものだ。

そんなことを考えながら歩いていると、目の前の枝に一羽の小鳥がやってきた。さっそくFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの出番がきた。2kgを超える長玉を抱えて歩く苦労も、こういうチャンスが一度でもあれば報われる。
驚かせないように静かにフレーミングをしてレリーズ。暗い場所でファインダーではハッキリしないが、背面モニターで確認してみるとヒタキっぽいシルエットに斑点状の模様。帰宅後調べてみるとルリビタキの幼鳥のようだ。(後ほど近くで成鳥も確認できた)
足が進まない水と苔の道

スタート地点である中の駐車場から小一時間。ようやく(とはいえだいたいCT通り)登山口である夏沢鉱泉へやってきた。


夏沢鉱泉への到着に前後してコガラやサメビタキを見ることができた。どちらもパッと見はその辺にいそうな鳥だが、高山帯に暮らす野鳥だ。あちこちからさまざまな声が聞こえるし、暗い枝の間を数羽が飛び回っているので他の野鳥にも期待できそうだ。(とはいえ警戒されているようなので長居せずに先へ進む)

夏沢鉱泉から次の分岐点になるオーレン小屋までの間は水と苔の道が続く。ふんわりとした苔が森全体を包んでいるような場所もあれば、沢沿いには小さな湿原のような場所もある。Tシャツだと肌寒いぐらいの気温も手伝って、清涼な気分にさせてくれる登山道だ。


沢と苔以外にも、面白い形のきのこや土柱(石が傘になって土が雨に流されず柱状になったもの)があったり、見るものが多くてなかなか先に進まないのもこの道の魅力だろう。

そんなわけでオーレン小屋に着く頃にはすっかり空腹。ちょうど軽食の提供が始まる時間が近いので、早めの昼食をとることにした。
火山のエネルギーを感じる稜線へ
沢の風景とはここで別れ、岩と火山の壮大な力を見られる稜線への道を歩き出す。当初の予定では峰の松目を経由して硫黄岳山頂を目指すことにしていたが、南八ヶ岳方面はガスに覆われてきているようなので、まずは夏沢峠へ向かい、そこで先の状況を見て判断することにした。


水の流れる沢は姿を消したが、それでもまだ水の気配は濃く、青々とした苔に覆われた森が続く。赤いスコリアが苔に埋もれている様子はとても八ヶ岳らしい。

足下から頭上の木々まであらゆるものを気にしつつ、ゆっくりと進んでいるうちに夏沢峠に到着した。ここは八ヶ岳の東西南北を繋ぐ交差点のような場所で、山小屋が2軒建っている。(2025年9月の時点ではそのうち山彦荘のみ営業しているようだ)
晴れていればここから硫黄岳の断崖がよく見えるはずだが、上の写真でご覧の通りガスに阻まれ残念ながら一部しか見えなかった。この先、硫黄岳のピークにかけてガスで展望が望めないようなら引き返すことにして、様子を見ながら進んでみることにした。

ガレ場を越えそろそろ稜線へというところで、南西から吹き上げてくる風と切れ目のない雲に視界は遮られた。残念ながら目当ての地層を見られるアテがなくなったので引き返して森の中で野鳥を探すことにした。
野鳥に恵まれた下山路


稜線からの展望には恵まれなかったものの、下山路では野鳥との出会いに恵まれた。ルリビタキの若鳥やカワガラスがサンショウウオを捕食するシーンだ。他にもコマドリやコルリは目で捉えたのみで残念ながら写真に収めることはできなかったが、さまざまな野鳥や岩石を楽しめ、とても充実した山行になった。
AIの助けで事前の調べ物が大きく効率化し、山歩きで得られる情報量は飛躍的に増えたことを実感する一日だった。結果として山頂は遠くなってしまったが、登山道という線での捉え方から山の相や時の積層をより深く感じることができるようになったのは大きな変化だろう。