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登山道具もカメラも、もっと快適に。3Dプリンターで“自分仕様”を整える」
3Dプリンターを使いはじめてから、日々の中で感じたちょっとした不便や「こうだったらいいのに」を形にするのが楽しくて仕方がない。思いついたアイデアを3DCADで設計し、すぐさま造形し、実際に使ってみる——その繰り返しの中で、自分が求めていた使い勝手の道具が少しずつ増えていく。
今回は、これまでに3Dプリンターで作ってきたプロダクトの中から、カメラや登山道具まわりを中心にいくつかを紹介したいと思う。どれも日常の中で「もう少し使いやすくしたい」と感じたところから始まった、個人的な工夫の記録である。
RICOH GXR A12 グリッププレート

A1 miniを購入して3DCADの操作に少し慣れてきたころ、最初に本格的に作ったのがRICOH GXR用の拡張グリップだった。ベース部分はアルカスイス規格に対応させ、三脚への取り付けも手早くできるようにしている。
GXRというカメラは、コンパクトな本体にセンサーとレンズが一体化した「ユニット」を交換するという、少し変わった仕組みを持っている。その中でもAPS-CセンサーとライカMマウントを組み合わせたMOUNT A12というユニットを使っているが、これがなかなか扱いにくい。
ピントはマニュアルのみ、背面液晶はあまり高精細とは言えず、EVFも手に入りづらい。さらに、本体が小さくてグリップ感もあまりないため、操作性にはかなり不満があった。
そんな背景もあり、グリップを自作するのは自然な流れだった。ちょうどカメラ周辺アクセサリーの設計に欠かせない1/4-20 UNC(三脚ネジ)の扱いを練習してみたかったという理由もある。
α6700用アイピース

これはソニー製ミラーレス一眼カメラα6700に対応した、自作の交換用アイピースである。α6700に限らず、ソニーのミラーレスカメラではアイピースが外れやすいという声が多く、実際に私も何度か紛失しかけたことがある。
原因を観察してみると、純正のアイピースはボディに固定するクリップのテンションがやや弱く、さらに本体側面の出っ張りが大きいために外れやすい。加えて、後方への張り出しが控えめな設計になっているせいか、晴天時などはファインダーが見えにくくなることもあった。
こうした点を踏まえて、自分の使い方に合うように設計を進めた。試作をいくつか重ね、テンションの調整と左右の張り出し、遮光性のバランスをとることで、納得のいく仕上がりになった。
私は撮影時はコンタクトレンズを使用することが多く、それを前提とした設計になっている。そのため、メガネをかけたまま使うには少しクセがあるが、装着時の安定感は向上しており、日中の視認性も改善されている。反響が多ければBoothでの販売も検討中だ。ただし少量生産のため、純正品と比べて価格がやや高めになることはご理解いただきたい。
SIDEKICK for DJI Osmo Pocket 3

DJI Osmo Pocket 3を持ち歩くために、自分用に設計したホルスターがこの「SIDEKICK」である。バックパックのショルダーハーネスに直接ベルクロテープで装着する方式で、Goproマウントのようなアダプター類を使わずにすっきりと取り付けられる。
本体重量は約20gと非常に軽く、これは登山や長時間の移動時に特にありがたい。バックパックの中身は少しでも軽くしたいと思う場面が多く、こうした軽量設計は使い勝手に直結するのだ。
形状には少し工夫を加えていて、Pocket 3のモニターを回転させた状態で差し込むと、それが物理的にロックされるようになっている。この状態では、不意に電源が入ったり切れたりするのを防げる。移動中にバッグの中で電源が入り、気がつけばバッテリーが空になっていた……というような事態を減らすことができた。
撮影時には一度ホルスターから取り出す必要があるが、自分の使用スタイルではこれで十分に実用的だと感じている。コンパクトな撮影機材をどう運ぶか、という視点で考えたときに、こうしたシンプルな設計はひとつの答えになると思う。

mont-bell クイックフィットワカン用クリップ

mont-bellのクイックフィットワカンをバックパックに収納する際、悩ましいのが持ち運び時のばらつきだ。ワカンはアルミ製で表面が滑りやすいので、ザックの中に入れても安定せず、ちょっとした動きで位置がずれたり、道具同士がぶつかって音がしたりする。
その対策として作ったのが、この収納用クリップである。基本は2個1組で、ワカンの内側から左右を挟み込むように設計しており、しっかり固定できることで収納時の安定感が増す。結果として、バックパックにしまうときの手間やストレスを軽減できるようになった。
登山時に使用することを前提としているため、クリップ本体はできるだけ軽く、それでいて一定の強度を保つ必要がある。そこで構造にはトラス形状を取り入れ、不要な素材を減らしつつもねじれや折れに強い作りとした。

サイズは2種類あり、私の分には幅のある「ワイド版」、妻が使うコンパクトなセットには「ナロー版」を用意した。それぞれのワカンに合ったフィット感が出るよう調整している。
SONY FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS用レンズサポートハンドル

SONYの超望遠ズームレンズ、FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの手持ち撮影を安定させるために、自作したサポートハンドルである。純正の三脚座はやや短めで、そこを下から支えて構えると前側が重く感じられ、持ち運び時のグリップとしても少々頼りない。
そこでレンズの重心を意識しながら、下部からしっかり支えられるようなハンドルを設計した。取り付け部分には、サードパーティ製のアルカスイス対応レンズフットを芯材として使用している。PETG製のパーツだけでは、重量のある望遠レンズをしっかり支えるにはやや不安があるため、金属製のフットをベースにし、その上から形状を覆うように3Dプリントパーツをかぶせる構造とした。
当初は手持ち撮影専用として設計していたため、アルカスイスの溝は設けていなかったが、脱着に工具を要する構造となったので三脚座としても使えるように形状を調整した。荷重がかかる部分には厚みを持たせ、ホールド感を損なわずに十分な剛性を確保している。
実際にフィールドで使用してみると、構えたときの安定感や取り回しのしやすさは想定以上で、個人的にはかなり満足のいく仕上がりになった。一方で、使用している中国製レンズフットの供給が安定していないこと、また三脚ネジ穴の位置調整にやや無理がある構造のため、販売は見送っている。
自分の道具は自分で作る楽しさ
どれも市販品では手が届かなかったり、そもそも存在しなかったりするニッチなものばかりだが、3Dプリンターがあることで、それらを「自分でなんとかする」ことができるようになった。寸法やフィット感にこだわって設計し、試作を重ねるプロセスそのものが、ちょっとした趣味としても心地よい。
今回紹介したプロダクトの中には、いずれ販売してみようかと考えているものもあるが、多くは自分の使い方や道具に合わせて調整しているため、あくまで“自分仕様”のものがほとんどだ。
これからもまた、道具と向き合いながら、3Dプリンターで生活の中の小さな課題を一つずつ解決していきたいと思う。