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夜祭撮るに及くはなし – NOKTON 40mm F1.4 Classic MC VM
Voightlander展と抱き合わされた北村写真機店という沼
新宿の北村写真機店で開催されていた大村英明氏の主催によるVoightlander展 Vol.3を観覧した。その際、うっかり(むしろ確信的に……)下のフロアに置いてあったNOKTON 40mm F1.4 Classic MC VMを購入してしまったという話だ。無理はない……Voightlanderのレンズ群がもつ紗をかけたような滑らかなトーンがAfloアトリエの上質なプリントで展示されているのだ。
NikonからCanonのカメラに入れ換えた際に手放してしまったが、以前からVoightlanderのレンズは気に入っていたわけで、そんなレンズで撮影された写真のみの展示を見に行って刺激されないわけがない。しかしながらCanon製カメラ向けのVoigtlanderレンズはあまり数がなく、この秋(2023年)にようやくRFマウントのNOKTON 50mm F1.0が発売されたばかりだ。
であれば、当然にこの50mmを……となるところだが、CP+で試写したり北村写真機店でMマウント用の同レンズをアダプター越しで試写したところ、開放付近でフリンジが盛大に出てしまい2段ほど絞らないと(自分にとっては)厳しいレンズだと感じてしまった。絞ればキリッとするというなら、最初からMマウント用のAPO LANTHAR 50mm F2をアダプターを介して使えば良いし、気分としてはNOKTONらしい少しゆるい開放描写が欲しい。
そんな中で目に留まったのがNOKTON 40mm F1.4 Classic MC VMというレンズだ。
実際に北村写真機店で試写したところ50mm F1.0ほど開放で暴れないし、なにより摘まめるほどにコンパクトな鏡胴(全長29.7mm重量175g)が軽快な気分で撮影するシーンを想像させてくれる。
なにはともあれ11月の末に「夜(NOKT)」を冠するレンズを手に入れたわけだ。となれば最初に撮るものは自動的に「秩父夜祭」に決まるわけだ。
入手の経緯はこの辺にして、その実力はどうだろうか。
秩父夜祭 宵宮を歩く
師走という通り、毎年のこの時期(12月の頭)は仕事の山場で近くに住みながらも秩父夜祭に出かけることができなかった。なんだかんだで10年来の念願叶って(宵宮とはいえ)ようやく夜祭を目にすることができた。
臨時駐車場に車を駐めまずは秩父神社へ向かう。
まだ街にはあまり出店なども出ていなくて本番は翌日という空気が流れているが、秩父神社は参拝客が長い行列を作っている。
修復されたばかりの社殿の彫刻と夕日に照らされる大銀杏が鮮やかだ。少しずつ傾いていく陽の光に比例して静かに、しかしじわりと祭りへ向けて街に熱気が漂ってきたような気がする。
祭りのクライマックスを迎える市役所前の広場。盆地の縁に衝き上げる武甲山は本当に大きく、もうかなわぬことながら”在りし日”の姿(秩父神社の社務所に当時の姿を捉えた大きな写真が飾られている)を想像して特別な山であることを実感する。その後、かるく空腹を満たしながら屋台(山車)が出ているという大通りを目指す。
最初に見つけたのは上町の屋台。日が暮れてからの曳行を会所の前で静かに待っていた。秩父夜祭と同じく「山・鉾(ほこ)・屋台行事」としてユネスコ無形文化遺産に登録されている川越の山車より全体的に一回り大きく圧倒される。翌日の大祭では左右にさらに張出しがつき歌舞伎が催されるというから、その迫力はさらに増すことだろう。
迫力に圧されながらも屋台をぐるりと眺めているうちにすっかり日も暮れた。ここからがNOKTONが本領を発揮する時間だ。せっかく「夜」と名が付くレンズで撮るのだからカメラの感度をISO1600(おおよそISO800で済んだが)までに抑えて、レンズの明るさを使っていくことにしよう。
6時を回ったころから、街は一段と熱気を帯びて各町の会所のまわりも慌ただしくなってきた。開放にするとピント面もややふわっとゆるくボケるが、街全体が興奮状態に向かっていく空気を写しとるのにこれほど適したレンズがあるだろうか。
大ざっぱに距離指標で合わせて腕を上に伸ばして撮影した一枚。コンパクトなMFレンズはこういう状況の自由さも良い。
Voightlander NOKTON 40mm F1.4 Classic MC VMは、まさに夜祭撮るに及くはなしと言うにふさわしいレンズだ。
※ NOKTON 40mm F1.4 Classic VMにはシングルコート(SC)とマルチコート(MC)の2タイプあるので購入の際はどちらのタイプか確認が必要だ。