当サイトは広告・アフィリエイトプログラムにより収益を得ています。
石楠花を求めて─佐久の幽岳「御座山」へ
昨年(2023年)の12月にも訪れた御座山(おぐらさん)。山頂付近が石楠花に覆われていて花期がやってくるのを楽しみにしていた山だ。
株の密度から石楠花の名所だろうことは想像に難くないのだが、問題はいつが見頃なのかということだ。陽の当たり具合で同じ場所でも花の付き方にバラツキが多い上、幽岳と呼ばれるだけあって西上州とも奥秩父とも少し距離の離れた独立峰で、開花状況を探るにはYAMAPやヤマレコでの情報もそれほど頼りにならない。
とはいえ、似たような標高の十文字峠や瑞牆山で咲いているという情報はSNSでちらほらと見つけることができるので大外しはしないだろうと、梅雨加減の雨天の合間に登ることにした。(大雨じゃなければ少しぐらい湿り気があったほうが、石楠花には雰囲気があって良いぐらいだ)
コースは前回と変えて、南相木村の栗生登山口から不動の滝や前御座山を経由して山頂を目指すピストンコースを選んだ。
栗生登山口
出発点の栗生登山口はGoogle Mapsでピンの立っている場所から実際はもう少し進んだ先、林道の最奥にある。基本的にアクセスはマイカー以外はあまり現実的ではないが、駐車可能台数は10台あるかないかぐらいのスペースでトイレなどの設備もない。8時過ぎの到着で2台分程度の残りスペースに滑り込めた。
登山中に出会った人の数と駐車台数が合わないので、複数台でやってきて長者の森(または白岩)とこちらに車を置いてあとでピックアップしにくるプランも多いのかも知れない。南北両方のコースは、稜線の形は似ていても道の雰囲気はかなり違うので、南から北へ抜ける(またはその逆)コースは面白そうなので、機会があれば仲間を募って試してみたい。
YAMAPのログは登りの途中でGPSが暴れて一部乱れているが、ぐいぐい高度が上がっていくのが分かりやすいデータになっている。ちなみに北側の白岩登山口からのデータはより急登具合が強い。
ガレた沢沿いを歩く序盤
登山口から一つ目のランドマークとなる「不動の滝」まではガレた沢沿いを歩いていく。森は手入れされているようで開けているものの、足下は浮き石がゴロゴロしていて歩きにくさを感じる。
時折霧がスーッと湧いてきて森を包む。わずかに鳥の声が響いてくるだけで静まりかえった森はとても幻想的な雰囲気だ。
1時間ほど歩くと、涸れていた沢筋にもせせらぎが聞こえ始めた。沢音を聞きながらしばらく歩くと、おおよそ中間地点となる「不動の滝」に到着だ。道は滝の下を渡渉しつづら折りで高度を上げるように滝のそばをかすめて続いている。まだ、本格的な梅雨に入っておらず水量が多くないのでそれほど気にならないが、雨量が多い時期はちょっと気になるポイントだ。(滝のそばにあった不動の像も数年前に流されてしまったそうだ)
斜度を増していく後半戦
滝を眺めながらの休憩を終え、この日の目的、石楠花に覆われる山頂部を目指す。が……
滝を越えると斜度は一気に増す。垂直に伸びる木の幹との角度を見るとおよそ30~40°ほどの斜面が延々続き、そこを細かくつづら折りで道がついている。もともとの踏跡もそれほど濃くなく、獣道も多いので気を抜くとすぐに間違えた方向へ行ってしまいそうだが、細かく目印のピンクテープが施してあるのがありがたい。
道しるべのおかげで迷わず歩けるのはありがたいものの、ずっとふくらはぎが伸びっぱなしで休憩できる平たいポイントがないというのも地味に堪える。つづら折りの踊り場で小休憩を挟みながら高度を上げていくと、周囲の森はコメツガが中心になりその奥に険しい岩壁が立ち上がる、庭園のような様子に変わってくる。
岩の威容に圧倒されながら道なりに進んでいくと唐突に「山頂まで500m」の標識が現れた。山の中で見る「あと○○m」ほど体感と一致しないものはないと思うのだが、果たしてこれはどうなんだろうか。ここから山頂までの間には「前御座山」という前座もあるというのに500mで着くとは到底信じられない。
そんな猜疑心を抱きながら岩の向こうに回ってみたら「ほらな?」と言いたくなる鎖場が待ち構えていた。地図で確認してみるとここから前御座山の頂まで140~150mほど一気に登る鎖場になっている。そこから50mほど下り、180m前後を登り返す。標高差だけで400弱だが、斜めに移動していくことを考えると、確かに500mちょっとぐらいで山頂に着くかもしれない。勝手に疑って勝手に納得してしまったものの、感覚と合わないだけで登山道上の道標をこれからは信じることにしよう。
花盛りの山頂部
さて、前御座山を登って下りて、再び山頂へ向けて登り返したところでこの日の核心部が現れた。
前御座山の山頂前後からちらほらと見かけていたイワカガミが、山頂へ向けて岩を乗り越えたところに大群落を作っていた。
陽の射し込む場所では石楠花(アズマシャクナゲとハクサンシャクナゲ)が美しい花をいくつも開いている。北相木村からの白岩コースほどの密度ではないが、深い緑の中に咲き乱れる足下のイワカガミと頭上の石楠花の鮮やかなピンクが鮮烈で、急登を登ってきた甲斐があったと嬉しくなる。
花盛りの山頂直下を楽しみ、避難小屋の前を抜けると岩稜が突き出した山頂だ。八ヶ岳や浅間連山には雲が残っているものの、爽やかに晴れ気持ち良い風が吹き抜けていた。
野鳥について
空が晴れてからの下山では野鳥の声もあちこちから聞こえてきた。鳴き声で鳥種を同定できるアプリ「BirdNet」と目視の両輪で、ルリビタキ、アカゲラ、ムシクイ、ミソサザイ、ヤマドリが確認できた。
新緑の季節になると撮影までというのはなかなか難しくなるが、双眼鏡や望遠レンズを持っていればより楽しめたと思う。(石楠花は高嶺の花というだけあって手の届きにくいところで咲いていることも多い)