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佐久の雲海に衝き上げる孤高の峰─御座山
雲の海に浮かぶ独立峰
八ヶ岳から東を眺めると秩父の山々から離れ、左右対称なシルエットを雲海上に衝き上げる山がある。雲の海に浮かぶ岬のようでもあり、その山頂からは遮るもののない絶景が望めるであろうことは想像に難くない。それが長野県北相木村と南相木村の境に聳える御座山(おぐらさん、2,112m)だ。
登山道は山頂を境に北相木村、南相木村方面の尾根づたいにそれぞれ伸びている。今回は12月の中頃(2023年12月18日)ということもあり、農作業期間中は通行止めになっている北相木村の白岩登山口から @alcinist 氏と登ってきた。
甲武信岳、国師ヶ岳、金峰山と連なる奥秩父の主稜線の向こう側にぽつんと浮かぶ独立峰であることから、地図で見るとそれほど遠くなさそうに見えて、関東側からアクセスしようとするとなかなかに遠く、道の駅はなぞので合流してから登山口につくまでに車で3時間ほどかかった。登山口の周辺ではヤマドリや走り回るリスやキツネの姿が見られた。
コースについては八ヶ岳からの見え方やYAMAPのログでも分かりやすく表れているように、短いけれど急な上り下りを繰り返す、抑圧からの開放感が気持ちいいタイプの山だ。
落ち葉と氷の尾根道
暖冬の影響で例年なら雪に覆われている時期のはずなのに今年は登山口にはまったく雪がない。しかし、この日は冬らしい寒気が入り降雪の気配はないものの、気温は低く登りはじめから下山するまで終始-7℃前後で、一日中凍り付いた尾根道を歩くことになった。
登山口からして既にガチゴチに土は凍り付き、そこら中に分厚い霜柱が盛り上がっている。サクサク軽快な足音を響かせながら歩けるかと思いきや、霜柱もガチゴチで落ち葉が積もっているおかげで油断すると足が滑り、じわじわと緊張が続きなかなか身体が温まらない。
とはいえ最初の急登を登りきり尾根に出ると、わずかながら朝日が射し込み気持ちは明るくなる。雪もなく、他の登山者もなく、鳥のさえずりや風の音もなく、だただた静かな尾根道ながら、そこかしこに奥武蔵や奥秩父の山の面影があり、「ここは○○岳のあそこに似てる」だとか「□□山のあそこみたいだ」と話は弾む(が、息はあがる)。
視界を覆い尽くすしゃくなげの尾根
「まるで奥武蔵・奥秩父を凝縮したみたいな山だ」なんて話をしているうちに気がつけば最初のピーク「見晴し」に到着していた。この辺りから植生もガラッと変わりしゃくなげのトンネルのような道へと変わる。
右から左から伸びてくるしゃくなげの枝をくぐりながらアップダウンを繰り返す。足を持ち上げる一段一段も大きく息はあがるが、見上げれば頭上をしゃくなげのドームが覆っていて壮観な花の季節を予感させてくれる。
一歩ずつゆっくりと進みふたつ目のピーク「前衛峰」。ここは山頂方面以外の展望はあまりなく、気合いを入れ直すポイントと言った方が分かりやすいかも知れない。YAMAPのログにも明らかなようにここから一度グッと下るのだが、その先に待っているのは最後にして最大の急登だ。
絶景の展望台へ
前衛峰から山頂への急登は運動不足の身体には堪える……正直なところ「できれば登りたくないな」という気持ちも湧いてくるが、時折射し込む綺麗な光をファインダーで捉えながら気を紛らわせ一歩ずつ進む。
斜度はキツいものの距離は短いので案外早く山頂直下の避難小屋に到着した。山頂のすぐそばながら、周囲はしゃくなげに囲まれていて快適そうだ。バックパックはここにデポして山頂へ向かう。
避難小屋から1分と離れていないのに山頂部は岩が露出していて、さながら周囲がぐるりと見渡せる展望台だ(360°の眺望と紹介されていることもあるが、実際は南東方面は木々に遮られていて270°ぐらいだろう)。
南側には金峰山から瑞牆山あたりの奥秩父主稜線、南アルプスが伸び、正面に八ヶ岳連峰がどっしりと座している。西から北へ目を移すと遠く北アルプスから越後山脈へ稜線が続く。その手前に浅間山と上毛三山と、日本の真ん中にある名山がぐるりと展望できるまさに絶景だ。
遮るものがなにもないので風があれば厳しい寒さに襲われる山頂だが、この日は無風で唯一プラスの気温(それでも3℃)だった山頂下の少し開けた日向で南アルプスと八ヶ岳を見ながら昼食をとることにした。
ちなみに御座山があるのは長野県の東の端だが、西の端にある北アルプスまで広い長野をまるごと眺めていると思うと少し不思議な気分になる。
撮影機材
この日の撮影機材はEOS R5とVoigtlander NOKTON 40mm F1.4 Classic MC VMのみ。
ライカMマウント用のレンズをアダプターを介してEOS R5で使用している。この組み合わせで使用するときは電子接点がなくシャッターとの同調が上手くいかず露光ムラが起きることがあるのでシャッタースピードは1/800より低速に抑えた方が良い(このレンズに限らず電子接点がない場合は同じ問題が起きる)。