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【レタッチノート】Vol.2 迫力のある夕景の渓流 三波渓谷
シリーズ2回目はLightroomのみで済んだ1回目と変わって複雑なRAW現像・レタッチプロセスになります。前回の弓池の鴨とプロセスが違うのは偶然性に期待した鴨と違い、意識的に画面を組み立てているからに他なりません。
画面の構成(構図)
撮影ポジションの決定
まずは現地の様子を見てみます。
奥に森の切れ目がありそこから夕空が覗いていて、そこから手前の岩へ向かって川の流れが迫ってくる構図を作りました。赤が視線の流れで手前の①の岩から水が割れる②の岩、節理が印象的な③の岩で一旦視線を止めて、④の夕空へ抜ける流れです。その視線の流れを補強するために青の線が効果的に入ってくるポジションを探して三脚を設置しました。
余談ですが、私が今使っている三脚は三本の脚を繋ぐステーが付いていて設置の自由度が低くポジション取りが難しいことがあり、この記事の公開後LeofotoのLS-284Cに切りかえました。剛性の高いカーボン脚とコンパクトに収まる4段ということもあり、山行時にも相性がいい三脚です
シャッタースピードの選択
ポジションを決めたら次はシャッタースピードの選択です。ハイスピードなのかスローなのか、それとも中間なのか?いくつか試してベストな流れ具合だったのが1/4秒でした。
これでベースになる素材が用意できたわけですね。
その結果がこちら、いわゆる撮って出しに近い状態です。ホワイトバランスが冒頭の完成写真とかなり違いますが、現場でホワイトバランスを合わせにくく後で調整することを前提に撮影しているのでこれでOKです。
レタッチの方向性
レタッチの方向性としては大まかにホワイトバランスの調整、手前の岩のディテールおこし、奥の光の演出の3点。手前を明瞭に、奥をコントラストを下げかすませるのは空気遠近法を強調してあげると考えると分かりやすいかも知れません。結果として絵画的な仕上がりになります。
基本補正
基本設定は以下の通りです。この段階ではディテールアップに関する項目は触っていません。LightroomではベースになるRAW現像、ディテールアップなどのレタッチはPhosothopへ渡した後、Nik Collectionや覆い焼き・焼き込みツールで施します。
この中で劇的に変化があるのはカメラキャリブレーションの「CameraLandscapeプロファイル」と「ホワイトバランス」の項目ですね。これでおおよそのトーンと色が方向付けられました。
ですが、全体にまだ暗く潰れていたり空気感に乏しい感じがしますね。画面の構成の項で示した赤い4つの要素が機能しきれていないのです。そこで主軸になる要素が機能してくれるよう円形フィルターを使ってメリハリを出していきます。
一つ目の円形フィルターは手前の水流のやや濁った印象をクリアにするため白レベル:10/黒レベル:-2/明瞭度:10/かすみの除去:10としました。
二つ目の円形フィルターは画面奥の木の切れ間からの光の演出です。中央の岩にかかったエリアは円形フィルターウィンドウ内の新規/編集/ブラシからブラシを選びオプションで「除去」に切り替えてから不要部分をなぞることで除去できます。このフィルターのパラメーターは色温度:10/色かぶり補正:10/露光量:-10/シャドウ:20/かすみの除去:-12としました。
だいぶ奥行きが出てきました。この状態からPhotoshopとNik Collectionを使って仕上げていきます。
Photoshopへ渡して仕上げていく
せっかくのRAWデータからの豊富なトーンなのでLightroomからPhotoshopへ渡す時は16bitチャンネルで渡します。ライブラリモジュールのグリッド表示の状態で右クリックで「他のツールで編集 >
Photoshop」です。
Nik Collection Color Efex Pro(プラグイン)で印象を決定付ける
今回はISO800というやや高感度ですがノイズは十分に消えているのでそのままNik Collectionで編集します。「フィルタ > Nik Collection > Color Efex Pro」へ直行です。(今回、完成のイメージは既にTIFFファイルとして書き出してしまっていたので完全な再現ではありません。ニュアンスとしてこんなことをやっているよぐらいで受け取ってもらえれば幸いです)
Color Efex Proでのレシピはプロコントラスト(全体に控え目で)/ディテール強調(手前の岩中心にコントロールポイント)/サンライト(全体から手前と中央の岩、左上のシャドウ部を除去のコントロールポイント)としました。この辺りはあまり詳細に書き出しても写真ごとにパラメーターは変わるのでおおよそそんなものぐらいで考えてください。
これで完成まで95%といったところです。あと少し!
焼き込みツールで仕上げ
Color Efex Proで写真の印象がほぼできあがったので後は最後の仕上げです。サンライトのエフェクトで手前二つと中央の岩のシャドウまで浮き上がり気味なので焼き込みツールを使ってシャドウを引き締めます。
焼き込みツールの範囲をシャドウにし露光量を5%、トーンの保護にチェックを入れたら文字通りシャドウを締めたい部分をなぞります。
完成
これにて完成。
今回のレタッチノートは積極的にイメージを作っていく方向性になりました。「写真」という言葉でくくると首をかしげる方もいるかも知れませんが作り込んでいく写真もひとつの表現。完成形をイメージしながら現場ではある程度割り切って撮影するというプラン選択も私は大事なことなのではないかなと思います。
ところで今回の作業の中でいくつかブラシを使う場面がありました。 LightroomにしろPhotoshopにしろブラシを使う場面ではやはりペンタブレットがあると作業が捗ります。ペンタブレットと言えばWacomのIntuosが鉄板ですが、これまで使ったことがないという方にはもっともシンプルなOne by Wacomがおすすめです。
最廉価でマルチタッチ機能もありませんが、経験上マルチタッチはイライラさせられることも多く2048段階と写真編集には十分すぎる筆圧感度のこの機種でまったく支障はありません。書き味は上位モデルのIntuos Proに及ばないところはあるものの、そこにコストをかけるならばフェルト芯やエストラマー芯などペン先を変えた方がはるかに使い勝手は向上します。